think about you あの日の香りとすれ違うだけで溢れ出してしまう記憶がある

右往左往

溢れ出しそうな気持ちを両腕でかかえながら、高ぶる気持ちを押さえ込む。

なんて、伝えたらいいの。

なんて、言葉を発したら彼を私のものにできるの。

必死で思考を巡らせる。

私がぐっちゃんに心を引かれた場面は鮮明に思い出せるのに、ぐっちゃんの心を引き留める言葉は、ちっとも浮かばない。

早く、急げと、急かされる。

いつも雄弁な私が、ぐっちゃんを前にすると大人しくなる。

こんな特性が私の今を追い詰めていく。

私のぐらぐらに揺らぐ心とは、裏腹に、ぐっちゃんから言葉が放たれた。

「おくっていくよ。」

尻込みした私の、敗北が言い渡されたようだ。

こんなに心待にしていた夕食が、右往左往した私の心を一瞬にして灰色に染めていった。

また、離ればなれの日々が始まり、二人の隔たりはゆっくりと、でも明確に現れ始めていた。
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