とある愛世Ⅱ
そして、


「俺が、別れればいいの?」


耳元で囁かれた言葉に抗う手を止める。


「別れて、ほしいの?」

「……うん。」


再び問われた言葉に小さく頷けば、彼はひとつ息を吐いた。


「それじゃ、別れたらちゃんと、付き合おうか。」

「……別れて、くれるの?」

「うん。だからちょっと、待ってて。ちゃんと話つけるから。」


彼の吐息が首筋をくすぐる。体の向きを変えて彼の胸へと顔を埋めれば、彼の臭いが鼻孔を満たす。


「本当に?」

「うん。だから、もう泣かないで。あんたが泣いてるのを見るのはツラいんだよ、僕も。」


彼の大きな手が優しく頭をなでた。そこから伝わる微かなぬくもりさえも愛しくて。

今、彼が言った言葉の数々を頭の中で反芻する。

……そっか。やっと別れてくれるんだ。
やっと、わたしの気持ちと向き合ってくれるのかと思うと、胸のつかえがとれた気がした。




 ( 願わくば )
 ( わたしをあなたの )
 ( 1番にして )
 ( 好き、と言って )
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