ラストコール
そして、
翌日久しぶりにそろった。
実に1年半ぶりの顔ぶれだった。
薫、隼人、ジョーダット。皆がみな、それぞれ著しい成長を遂げていた。
成長は喜ばしいことだが、どこか寂しくも思った。
僕は彼らに伝えた。彼女からの伝言も。
皆目を開いて薄く微笑んで頷いた。誰も疑いはしなかった。僕の身に起きた摩訶不思議な体験を。

それから海の見える丘へ行った。
「あーぁ、昨日きたかったわぁ。」
「仕方がない。ジョーダットが来れなかったんだから。」
「ゴメン、薫。オレ、必死ニ帰国シタカラ。」
「ぐちぐち言うな、未歩に怒られるだろう。」
皆、4人で来るのは初めてだ。
「墓、綺麗やなぁ。そういや未歩の両親ここらへんに住んどったなぁ。」
綺麗な墓には有澤未歩と書かれている。
両脇にそれぞれ持ってきた華を添える。
「何と言うか、墓に合わない花ばかりだな。」
「誠一。君が言えることじゃないと思うがね。」
薫はカーネーション(ピンク)僕は薔薇(赤)ジョーダットはスズラン、隼人はスイセン。墓にはアンバランスだ。
ふと、ポケットが震えた。そのポケットに手を突っ込むと中から出てきたのは携帯。
この前まで、僕に不安や後悔や期待や喜びを与えてくれた奇跡の携帯。
メールでもきたのかと思い画面を開くとアドレスが載っていないメールが入っていた。
そんなことありえるのかと思いつつ添付フォルダを開いた。
視界に入ってきた画面に、僕は思わず息を止めた。
「…っ…!」
そこには笑顔でピースしている薫に後ろで腕を組み、眠そうに欠伸をしているジョーダット。眼鏡をかけなおしている隼人。そして…
そんな奴らの真ん中にそっぽを向いているあの頃の僕と隣りには満面の笑みを浮かべた彼女がいた。
じわり。胸と目が熱くなる。ここ最近、僕は彼女によって泣かされてばかりだ。僕をいとも簡単に泣かせることが出来るのは彼女だけだと思う。
「どうしたんや?誠一。」
携帯を覗き込んだ薫が息をのんだ。
この写真は、未歩が自分で腕を伸ばし撮ったものであり彼女以外持っていないはずの写メ。
何故、今頃届いたのだろう。
全員の個性が浮き出ているこの画像。各々、勝手だなと他人から見たら思われるかもしれない。だけど僕は知っている。いつもバラバラな考えのこいつ等がこの時、全員同じ気持ちだったのを。この上なく幸せそうに笑っていることを。
そっぽを向いている僕だって、口元が少しだけ緩んで幸せそうだ。
すっと画面の彼女を撫でる。
隼人の鼻をすする音が聞こえた。薫も必死で嗚咽を飲み込んでいる。ジョーダットは涙を流さないように上を見ていた。
『ありがとう、大好き。』
ふと彼女の言葉が過ぎる。空を仰げば、僕の今の心を表したかの様に雲一つない快晴だった。
「ーーー未歩」
彼女に向けて空に名前を呼んだ。君に届いてるかな。
一歩でも、前に進んでみるから見ていて。
行ってくる。僕も皆も全力で生きるから観てて。そんな意味を込めて。そして、止まっていた足を再び動かす。
「行こうか。」
3人が頷くのを尻目に進みだした。
ちゃんと観てるから、頑張ってね。誠ちゃん。
彼女が、笑いながら僕の名前を呼んで背中を押してくれた様な気がした。

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