ラストコール
深夜。
最早、恒例となってしまったいつもの時間。
予想通り、時間通り携帯がなった。
…とらなければいい。
そうすれば僕は彼女との過去に、自分が背負っている罪を苦しまずにすむ。
とらなければ、傷つくこともないのに。
彼女が僕を呼ぶ声が聞きたいから。
「…もしもし」
それでも。そう思っていてもボタンを押してしまうのは、心の底では彼女を求めているからなのだろう。
『もしもし』
嬉々とした声で今日の事を話す彼女。
君が話す事はある程度僕も体験した。一緒にいたのだから。
それは絶対にあり得ないこと。
でも、今現在あり得ていること。
『それでね、誠ちゃんも謝ってくれて。』
どれだけ苦しかろうと辛かろうと悩もうが悔もうが、"あの頃"は、"彼女"はもう戻ってこない。
『それでさ、薫もね仲直りしてたの。』
ぎゅっと目を閉じる。
彼女の声を聞きながら頬に暖かいものが伝っていった。
『薫さ、また先生とも喧嘩して。』
胸が壊れそう。
イタイイタイって叫んでるのに、痛みを和らげる術を僕は知らない。
電話から心配そうな声が聞こえた。
適当に返してまた明日、と言って切った。
とてもじゃないけれどこのまま会話を続けられるほど僕は強くない。
とめどなく溢れる雫。
あの時からちっとも僕は強くなっていない。
一歩も前に進めてないんだ。
(残り、4と表示された画面を僕は気付かず携帯を閉じた。)
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