くるうみ。~あなたと過ごした3日間~
……龍が去る。


神憑り。


山潮に生まれ育ったあたしだけど、初めて聴く話だった。


曾おばあちゃんは昔話をよくしてくれたけど、なぜか山潮の事だけは避けてたから。


「あの……そういえばこの木彫り龍はいったい何なんですか?」


あたしはどうしても気になって訊ねてみた。


すると、お婆さんはう~んと唸りながら一生懸命に思い出した後に、こう教えてくれた。


「わしもあんま知らんが、確か千年前に龍神様が雨を降らせた後に不思議と龍神様と同じ大きさの流木が山潮に流れ着いたから、龍神様の化身の御神体として祀ることにしたんじゃが、寺に祀るにはあまりに大きかったがため、やむを得ずに分割して地元の民に分け与えたそうじゃ。
うちの先祖は龍神様のお姿に感激しての、記憶を頼りにこれを彫り上げたそうじゃ」


……龍神様の姿。


改めて見上げると、確かに躍動感に溢れ精気が漲る見事な出来映えで、今にも動いて空を駆け出しそうな勢いがあった。


「ふう~~ん……でもここの龍神は変わってるんだな」


すっかりくつろいだ野島が指摘するから、あたしはヤツに何が解るかと睨みつけた。


「なによ、何がおかしいって?」


なぜかけんか腰に突っかかったあたしの言葉を野島はサラリと交わす。
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