くるうみ。~あなたと過ごした3日間~
「いや、特別扱いしないでよ。俺だって男だしさ」


野島は飄々と言うけど……。


あたしはカッコつけないでよ、と心の中で毒づいた。


何よ……


バイトもクビになって家賃滞納でアパートから追い出された極貧のくせに、なんであたしのためにに300円も出してくれるのよ。


マジで意味わかんない。


だけど……


何でだろう、ムーンストーンが触れた部分があたたかい。


まるで、野島に触れられているみたい。
そんな事を考えて、バカなと頭を振った。


野島の手はあたしに触れてなどいないのに、どうしてそんな事を……。


「瑠璃ちゃん、顔が赤いけどどうしたの?」


美紀さんに心配そうに声を掛けられて、やっと自分の顔が赤らんでいるってわかった。


「あ、あのさ野島! あたしも買ったげる。ほら!」


あたしはろくに見もせずに手に触れた石を掴むと野島に押し付け、レジにいたキミコおばちゃんに300円を払った。


「え、鈴本が俺に?」


野島が意外そうな顔をして言ったものだから、そんなにケチそうに見えたかとカチンときたあたしは、ヤツに向かってツンと顎をあげて「そうよ」とだけ言った。
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