そのキスの代償は…(Berry’s版)【完】
「やっぱり、そんなことしてもらうなんて…」

6枚目の試着を終えてあの人の前に出た私は、
どうしようもない羞恥心で戸惑いを隠せなくなり、
微笑むあの人にそんなことを言ってしまった。

あの人は一瞬切なげに顔をゆがめたが、
私の耳元に唇を寄せて囁いた。
あの香りが私の鼻孔をくすぐる…

「なあ。男が女に服を贈るのはなんでか知ってるか?」

そして、あの人は店員の死角に入ると
私の耳たぶをそっと噛んだ。

私は噛まれた瞬間、一瞬だけ震え、
飛びそうな意識を手繰り寄せながら首をブンブンと横に振る。

あの人の右眉が上がり、唇が歪んだ。

「お楽しみのため。もちろん…脱がすためだ」

そのセリフを囁き終え試着したドレスを着た私から
ゆっくりと後ずさり下から上へ…強い瞳で嘗め回す。

結局私はあの人の言葉に逆らえず
贈ってくれたドレスを身に着けて、
約束の店に、食事に出かけた。

あの人は私より少し後にやってきた。
あの人も正装している。


「個室にしたから、せっかくの時間を楽しもう」

そういってあの人にエスコートされ
私はその店に入っていった。

その店はドレスコードのある店で普通の生活をしている私には
無縁の世界だった。

食事は美味しく、終始楽しく進んだ。
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