そのキスの代償は…(Berry’s版)【完】
あの人は私の左手を取ったまま

「いくらおまえでも失礼すぎるだろう。
彼女は俺の部下で、一緒に研修に来ているだけだ。
食事くらい日頃の労をねぎらっておごっておかしくない
関係だろう?」

「お前がそうやって佐伯を連れて歩くのと同じことだ。

悪いが相良は気分が悪そうなので、彼女を部屋に連れて帰る。
用事があるなら、俺の部屋に連絡してから来い。」

あの人はそう言って、その場から連れ出した。

とりあえず、そこを逃げるように歩き去ったものの、
余りの恥ずかしさと恐怖に私は店を出てから、
動けなくなっていた。

あの人は、私の背中を押し、廊下を歩かせエレベーターに
乗せる。

密室になると、

「すまない。」

謝罪の言葉を…囁く。

そんなことを言わせたいんじゃない。

やはり表に出るべきでは、なかったのに。
どうして、こんなことになってしまったんだろう。

私は何も言わずに、ただ頷いた。

それからあの人は私を部屋まで送り届けて…
隣から、ドアの閉まる音が聞こえた。

たぶん、自分の部屋に戻ったのだろう。

私はドアからのろのろと歩き、とりあえずベッドに腰掛ける。
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