そのキスの代償は…(Berry’s版)【完】
その想い

奇遇(あの人Side)

いつもの転勤。新しい職場。


これをもう何度繰り返してきただろうか?


この仕事に決めた時、それは仕方がないことと諦めていた。


慣れた頃に新しい土地に移る。


せっかく馴染んだすべての物を捨て去らなければならない。


何事にも執着するのをやめた。愛着を感じることもなくなった。


それは、土地や店や人間…女についてもそうだった。


数年ごとのリセット。


俺は新鮮な新しい人生を生きた。


新しい人間関係をそつなくこなせば、

懸命に仕事に打ち込めば、嫌な事はすべて忘れられた。


仕事はいい。やった分だけの結果が得られる。





俺の直面する仕事以外の世界はうんざりするような状態だった。


だからこそ、転勤して一人でいる方が気が楽だった。


あの家から離れられればどこでもいい…


転勤なんで、人生でのちょっとした刺激。


同じ仕事を新しい土地で新しい人間関係の中でやる。


今回の転勤もそのぐらいに思っていた。
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