はじまりは政略結婚
兄の紹介に小さく会釈をすると、その人は驚いたように目を丸くした。

「そうだったんですか⁉︎ 絵本から飛び出してきたお姫様みたいですね。なんて、可愛いらしい」

『可愛いらしい』という表現が社交辞令だと分かっていても、嬉しくて口元が緩みそうになる。

すると、兄はどこか自慢げに話し始めたのだった。

「そうですね。母に似て、目が大きくて可愛い顔立ちでしょう? ただ、性格は人見知りで、こういう派手な場所は好まないんですよ」

兄にまで可愛いと言われ、だんだんと恥ずかしくなってくる。

小さくなった私を、久保田社長は目を細めて微笑んだ。

「そうですか。それは、控えめなお嬢様で素敵ですね。それに、百瀬副社長の妹さん思いが、よく分かりました」

「アハハ。よく言われますよ、シスコンだと」

楽しそうに笑う兄を見ながら、自然と笑顔になってくる。

今は彼氏がいない私だけど、絶対に兄より素敵な人でないと付き合えない、それをしみじみ実感する。

そんな兄を久保田社長も笑いながら、そして何かを思い出したような顔をした。

「そういえば、今日は嶋谷副社長はお見えになるんですかね?」

「智紀(ともき)ですか?そうですね……。聞いていないですが」
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