はじまりは政略結婚
温かくて柔らかい手に、不思議と心に落ち着きを取り戻す。

「この指輪は、智紀からのプレゼントなんでしょ? 彼の気持ちはこれに集約されてる。由香ちゃんは? 智紀のこと、どんな印象?」

「どんなって……。軽くて派手な人だと思ってました。だけど、それは違うかなって」

だから戸惑う自分の気持ちを、どう表現したらいいかが分からなくて、すがるように涼子さんを見た。

すると、彼女は穏やかに笑顔を浮かべたのだった。

「違うって思えることがあったんだ? まあ、由香ちゃんと智紀は、ヘタに顔見知りだから、今回のことは相当動揺しただろうけど、彼は意外といいヤツよ」

涼子さんがクスクス笑うのにつられて、私もぎこちなくも笑う。

「地味な自分がイヤなんですけど、どうしたらいいか分からないんです」

せめて、智紀と並んでも違和感の少ない絵図にしたい。

「なんだ、そんなこと? 由香ちゃんて、元は可愛いんだから、ちょっとの工夫でだいぶ変わると思うよ。だから、今度協力してあげる」

「えっ⁉︎」

と驚いたところで、ドアがノックされた。
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