color ~蒼の色~

夏休み~二人の距離~


……からん…ころん………

店の二階にあるこじんまりした住居スペース。

窓に飾られた竹風鈴の音を、私はペンを動かしながら聞いていた。

折りたたみの小さなテーブルに広げた宿題。

半ばその量にうんざりしていたため、目の前の宿題には集中できずにいた。


がりっ。
がりがり。


妙な雑音が混じったため、すぐ目の前の雑音源を見た。


「あ!あんた、人んちの机に何すんの!?」

「んー…。ゲージュツは止まらないのダー」


そう言い、どこで見つけたのかカッターナイフで、がりがりと何かを彫っていた。


「できたー」


まるで何か大仕事を終えたとばかりに、盛大に伸びをし、総二郎は寝転がった。


本人曰く“大作”を見れば、

アオ ソウジロ

と彫られていた。


「あんたね、真面目に宿題やんなさいよ」

「やだ、本日のエネルギー供給、終了されたから」

「おばさんに電話して、迎えに来てもらおうか」

「お前、いつから悪の手先になったんだ」


私たちの夏休み。

週3日は、うちの店の二階で宿題しながら過ごすことが多くなった。

本当は総二郎のおばさんが、

「このやる気の欠片もないダメ息子、毎日道場にぶち込む!」

と言ってたけど、

「そんなことしたら、俺は宇宙の塵になって、二度と戻らぬお星様になる」

と、げんなりするような息子の言葉に、しぶしぶ週3日は自由にしていいと許可してくれた。


「今からでも遅くない、ぶち込んでもらえばいい」

「ゴメンナサーイ」

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