color ~蒼の色~
「前に言ったろ。俺の右手の傷は、お前の色してるって」

私は小さくうなづいた。
総二郎の声が、直接身体に響いてくる。
私の熱は、きっと総二郎にも伝わってるはず。

「これは、俺の一部。この色はお前がつけたんだ」

私はあの時の光景を思い出し、ドキリとした。
それは私を庇った傷で、確かに私がつけたようなもの。
急に胸が苦しくなり、胸においた手に力が入った。

「…ご…ごめん、あの時は…」

声が震えてる。
決して消えることのない傷だからこそ、私は自分を許してはいけないのに、なぜこの状況に甘んじているのか、急に現実に引き戻される感覚だ。

それを察したのか、総二郎は笑って、私の額に頬を寄せた。

「だから謝るなって。言っただろ、俺は嬉しいって」

「なんで?だってそれは…」

ほんとは私が負うはずだったのだ。

「俺の身体に、お前の色がついた。消えない、俺だけの“色”」

少し身体を離し、私に見せ付けるように自分の右手を、愛おしそうに自分の口唇にあてた。

その仕種が、私はたまらなく恥ずかしくなり、目を逸らしてしまった。
まるで自分がそうされてる様で、恥ずかしくてたまらない。

恥ずかしい、離れたい、でも。
離れたくない。

夜でよかった。
私の顔色までわからない、きっと。

だけど、総二郎は言うのだ。

「蒼、今どんな“色”してるか知ってるか?」


あぁ、バレてる。
総二郎には隠せない。

もうきっと戻れない。
この気持ちは、きっと後戻りは出来ないのだ。

両手で頬に触れられ、ゆっくりと顔が総二郎に向けられる。


「蒼、俺の眼鏡外して」

「………え?」

「外せよ」

もう抗えない、逸らせない。

私はゆっくりと、総二郎の眼鏡を手にかけた。
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