ヤンキー君と異世界に行く。【完】
ごくりと唾を飲み込む。
まだぴかぴかの茶色のローファーを脱ぎ、何時間この川辺でこうしていただろう。
気づけば水面はだんだんと黒くなっていき、ゆがんだ顔は見えなくなった。
代わりに、底の見えない闇が現れる。
日が暮れてしまった。
遠くの方で、大人たちの声がしてる。
あれはクレーン?
仁菜が目をこらすと、黄色く細長い、キリンの首みたいなものが上下しているのが、遠くの橋の向こうで見えた。
すると、ついでにその橋の上から……
──パラリラパーリラ、パーリラー。パーリラーパーリーラー。
バイクのエンジンとクラッチを使ったコールが、仁菜の耳に聞こえてきた。
もちろん、迷惑なエンジンの爆音と一緒に。
──パラリラパーリラ、パーリラー。パーリラーパーリーラー。
コールしたまま、一台の黒いバイクが土手を降りてきた。
そして、仁菜の目の前に止まる。
「……なんでコールが『となりのト○ロ』なの!?」
思わずバイクにまたがっている人物にツッコむ。
──パラリラパーリラ、パーリラー。パーリラーパーリーラー。
──となりのトー○ロ、トート○ー♪トー○ロ-トートー○ー♪
そんなファンシーなコールをするやつは、一人しかいない。
仁菜はバイクの主をにらみつけた。