ヤンキー君と異世界に行く。【完】
そう思った仁菜だったけど、カフカは意外な反応をした。
「うっ……!」
かすかに頬を赤らめ、ひるんだように見える。
(もしかして……可愛い攻撃がきいたの?)
と思ったのも、一瞬だった。
カフカはぶるぶると首をふり、叫んだ。
「うううううるせえ!
人間は皆殺し!
それが俺の信条だ!」
ラスはちっと舌打ちをする。
そんな彼を、アレクとカミーユは「しょうがないなあ」という生ぬるい目で見守っていた。
「お前ら!まずあの黒い髪の人間から噛み殺せ!」
カフカの命令に、ぞっとする。
(やっぱり、颯を一番憎んでるんだ……!)
いっせいに颯に向かう魔獣たち。
「させるか!」
しかし仲間たちはそれを阻止しようと、散り散りになった。
カフカや魔獣の狙いを分散させるためだ。
魔獣のほとんどは戦闘に慣れてきた砂漠の民の銃弾を受け、倒れていく。
カフカは片手で軽々と剣を持ち、まるで遊び相手を探すような顔をしていた。
そして、ついに傍観していた魔獣の背中から降り、獲物を定めた。
「お前からやってやろうかな。
大将を討つのが、戦争の常識ってやつだ」
その灰色の目にうつっていたのは、颯ではなく、ラスだった。