ヤンキー君と異世界に行く。【完】
7.ヤンキー大活躍?

・選ぶ未来



仁菜はもう何度目になるかわからないくらい、地の裂け目をのぞきこんだ。


そこから、ふわりと銀色の物体が浮かんでくる。


颯と乗ったことのある、異世界バイクだ。


今乗っているのはアレクとカミーユで、仁菜の頭上を越え、砂漠に着地する。


すがるように見つめるが、二人は力なくうなだれるばかりだった。




颯がいなくなって、2日が経った。


仁菜たち一行はすぐ近くに寄せた、砂漠の中の軍艦に身を寄せている。


どうせ魔族にはこちらが近づいていることはばれているし、前の戦闘で傷ついた者もいるので、とカミーユは言っ
ていた。


3人はとぼとぼと軍艦の中に戻っていく。


集合場所となっている操縦室に入ると……。


「はい、シリウス。あーん」

「…………」


ラスが上機嫌で、怪我をしているシリウスの世話を焼いていた。


向かい合って座り、携帯食をシリウスの唇に寄せている。


シリウスは眉をひそめながらも、決して嫌だとは言わなかった。


ぱくりとそれを食べると、ラスの白い指先に、シリウスの赤い舌先が触れる。


「おいし?」


にこにこと笑って首をかしげるラスが、まるで新妻みたいに見える。


シリウスは黙ってもぐもぐしていたが、ほのかに頬が赤かった。


いつもならここで激萌えしてしまう仁菜だが、今はそんな余裕はまったくない。


< 328 / 429 >

この作品をシェア

pagetop