ヤンキー君と異世界に行く。【完】

・wild flower



……魔王と会ってから、3日後のこと。


仁菜の胸は、旅のどの時点よりもドキドキと高鳴っていた。


ラスにむりやり着飾らされたエンパイアドレスは、薄いブルー。


手首や耳にも重いアクセサリーをつけられ、メイクもされた。


『そのままでも可愛いんだけどね、一応大勢の前に立つわけだから』


ラスはそう言って苦笑していた。

颯に至っては、「宝塚みてぇ!」と爆笑。


(ラスはいいよね!
すっぴんでも派手で可愛いんだもんね!)


両隣に立つラスと颯は、ランドミルの城のバルコニーから、城下にもっさり集まった国民ににこやかに手を振っている。


(自分だって、ゲームキャラのコスプレじゃん)


まるで絵本の中の王子様のようなキラキラの衣装を着た颯を、仁菜は呆れて見つめた。


つらい旅を乗り越え、仲間に大切なことをたくさん学んだ。


確実に仁菜の中では何かが変わった気がする。


その証拠に、もう「死んでやろうかな」などとは、少しも思わなくなっていた。


だけど、本来のビビリな性格は、なかなか変わらないみたい。


仁菜は颯に背中を押され、手の中の『神の涙』をおとさないように気をつけながら、前へ出る。


そして、城下の人たちに必死で作り笑いをして、ぎこちなく手をふった。


< 394 / 429 >

この作品をシェア

pagetop