ヤンキー君と異世界に行く。【完】


「あの……颯?」


起き上がってちょいちょいと膨れた頬をつついてみる。


「ねえ、じゃあ、約束しよう」

「……なにを?」


やっと振り返った颯に、仁菜は条件を出す。


「今度の期末テストで、一個も赤点取らなかったら……」

「取らなかったら?」

「その……いいよ」


自分からはしたないことを言うのは、やっぱり恥ずかしい。


でも颯はそんなことは知らず、ぴょこんと跳ね上がった。


「ほんとか?

あああ、ていうか、それ無理じゃねーか。

全部赤とるなってことだろ?」


「だからそう言ってるじゃない」


「元はお前が言ったんだぜ。

帰ったらなんでもするって」


「でもエロいことはなしって言ったもん」


「ちっきしょー!」


颯は勝手に七転八倒して、悶えている。


「あーくそっ、わかったよ!

その代り、勉強教えてくれよな!」


やっとあきらめたようで、颯は涙目で仁菜に訴える。


「……工業高校の勉強はわからないかも。

颯、1年上だし」


意地悪を言うと、颯はまたショックを受けたようで、床にのの字を書き始めた。


「大丈夫、颯ならできるよ」

「てめー……ひとごとだと思って……」

「あたしのこと本気で好きなら、できるでしょ?」

「ううう……やるよ、やりゃあいいんだろ!」


< 411 / 429 >

この作品をシェア

pagetop