ヤンキー君と異世界に行く。【完】


っていうか、あたしの幸福は誰がくれるわけ?

もしかしたら、貴重な女の子として、専用施設で大事にしてもらえるのかな~とか思ってたのに……。

なのに、勇者一行についていかなきゃならないの?


仁菜の頭に不満が募っていく。


(しかもこのひとたちイケメンだけど、颯を筆頭に一癖ありそうな人ばっかなんだけど!)


どうせ心を奪われるなら、かっこよくて、優しくて、勉強ができて、ついでにスポーツもできる普通の地球人がいい。


この人たちとは、文字通り住む世界が違う。

颯はヤンキーだし、おバカだからイヤ。
ラス王子は、自分より可愛いからキツイ。
他の人たちは大人で、全く想像がつかない。


「……この智慧(ちえ)の塔はね、この国の守り神なんだ。

この塔が守ってくれているおかげで、ランドミルはここまで発展できた。

魔族はこの地を侵略して、塔の大いなる力を奪おうとしてる」


ラスの真剣な声に、余計なことを考えていた仁菜は少し恥ずかしくなって、うつむいた。


その瞬間……。


「というわけでえ、俺と結婚して、ニーナ!
俺と一緒に、この国を救ってよ。
そしたら俺、幸せになれるからさ♪」


「ええっ!?」


急に明るくなったラスの声。
気づけば両手を、その美しい手ににぎられていた。


驚いて上を向くと、アクアマリンの瞳に、自分の姿が映っている。


その近すぎる距離に緊張していると、颯が割り込んできた。


「ちょっと待ったー!

調子こいてんじゃねーぞ、このバカ王子!」


「は?お前は黙ってろよ。

ねえニーナ、いいでしょ?

俺、家柄も申し分ないよ?王族だし、一生楽させてあげるから。

もちろん、子供はたくさん産んでもらわないと困るんだけど」


「こ、こ、子供ってなあ!」






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