ヤンキー君と異世界に行く。【完】
(どうにかしなきゃ……)
こんな冒険の序盤で力尽きるのは、格好悪いから、いや。
仁菜がうんうんうなっていると、後ろから声が聞こえた。
「……あのさあ、とにかくニーナに説明してやってくんねえかな、アレク。
俺様は昨日だいたい聞いたけど、こいつは何も知らないんだからさ。
こんなことにならなきゃ、話さない方がいいと思ってたんだけど、状況が状況だし……」
颯の声だった。
仁菜が振り返ると、アレクがゆっくりとまぶたを開ける。
そんな彼を、他の仲間が見守っていた。
「ああ、そうだな。
ニーナは、知る権利がある。
精霊族と人間との仲が悪化したのは、まぎれもなく俺のせいだからな」
「アレクさん……」
戸惑う仁菜に、アレクは語りだした。
悲しい、過去の記憶を。