ヤンキー君と異世界に行く。【完】


ぐらりと脳が揺れる感覚のあと、がしりと手首をつかまれて、仁菜はその主を見つめる。


「颯……っ」


自分の手をつかんでいたのは、目の前の颯だった。


助かった、と思ったのは一瞬。


「げっ!!」


颯の足元が、つるりと滑った。


──ドボーン!!


漫画みたいな音を立て、二人は川の中へ落下した。


仁菜は混乱し、目を閉じる。


颯は仁菜の腕を離さず、なんとか彼女を引き寄せ、水面に上がろうとするが……。


ごぼごぼという音しか受け取らなくなった聴覚。


濡れて、まとわりつく衣服。


呼吸はすぐに苦しくなり、お互いの顔がかすんでみえた。


容赦なく、水は彼らを飲み込んでいった。




────彼らは、流された。


遠く遠く、遥かなる世界へと。



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