星屑恋夜~【恭&綾シリーズ】3~LAST STORY
32.存在
元々、大輔は良く喋るタイプではない。
そのことは長い付き合いになる百合はよくわかっていた。
しかし、今日はいつもにも増して大輔が無口のように感じてしまう。
百合が大輔の助手席に座ってから、彼は百合の話に相槌を打つだけで、一言も彼の言葉を発していない。
「帰ってからやりたいことって何?」
この質問なら、大輔は自分の言葉で答えてくれるだろうと百合は訊いてみた。
「ああ、ちょっと曲が書けそうだから。仕上げたいなぁと思って――」
「どんな曲?」
百合が大輔に曲のことで質問を続けるのは珍しいことだった。
大輔は百合の顔をちらっと見て、小さく微笑んだ。