星屑恋夜~【恭&綾シリーズ】3~LAST STORY
10.泉の生きる道(四)
それは恭司がまだ中学生だった頃、泉圭吾に知り合って半年くらいたった時だった。
「おやじさんってさ、独身だよな? なのにさ、なんで左の薬指に指輪してんの?」
恭司の問いに泉は目尻を下げて自分の薬指を見ていた。
「まぁ、結婚しているのと変わんない気持ちがあるってことだな」
「変わんない気持ち? なんだよ、それ」
「話してもガキには理解できんよ」
泉は恭司の頭をくちゃくちゃに撫で回した。
「わぁ、やめろよぉ」
それから後も、泉の指からその指輪が外されることはなかったが、恭司もそのことを深く訊くことはなかった。