キミとボクを繋ぐピアノメロディ
家族
莉子がリビングに降りると、母親はテレビを見ていた。どうやら先に食事をすませたようだ。
両親は共働きだったため、母親は料理をめったに作らない。
莉子がたいてい家事をするのだが、今日はピアノの練習をしたいと母親に願い出て、たくした。

母親が当番した食事は決まって、スーパーの総菜が並ぶ程度である。

莉子には5歳離れた姉もいた。姉は大学生だったため、帰りもまちまちだった。
姉は家事が嫌いで料理はもちろんのこと、あまりできない。

姉と莉子は正反対の性格をしていた。
莉子はどちらかと言えば人見知りせず、外に出たがりであった。
姉は引きこもりがちで人見知りであった。

(今日は総菜か……。)

その言葉は決して声に出してはならない。
莉子の母親は少々ヒステリックであった。
そこでこのように言ってしまうと、誰のために働いているんだ、いらないなら食べるなと返ってくる。
莉子は何も文句は言わず、ただ、「いただきます」と言った。

食事をしていると間もなく父親も帰ってきた。
「ただいま」という父親の言葉に莉子、母親も「おかえり」と言わない。
莉子は父親のことを嫌っていた。
母親も夫のことを嫌っていた。

ここ最近夫婦喧嘩が激しいのだ。
何かとあれば、離婚だなんだと騒ぎ立てている。


莉子はうんざりしていた。
離婚する、という喧嘩の後には必ず八つ当たりが来るのだ。

「あのときお前がああしていれば、私はお父さんにああ言われずにすんだんだ」

小学生の頃だったか、父親が母親に暴力をふるい、その後母親がこう告げたのだ。
小さい莉子にとってはショックでならなかった。
それが何度も繰り返しあったのだ。

一番上の女の子というものは可愛がられるものである。
しかし両親は男の子を望んでいた。
二人目を妊娠、出産し、女の子と告げられると父親はがくりと肩を落とした。
そして「もう女はいらない」と言ったのであった。

その話を莉子が幼稚園児のときにされたのだ。
そのときからだろうか……。
莉子は父親に対しての信頼が欠けていった。

とにかくここにいたくない、早く食事を済ませ、曲を覚えピアノ演奏を考えなければ、という一心で莉子はがむしゃらに食べ、自室へと戻った。
そして再び、ベットに横になり、仰向けになって考え始めた。

それは、あのサイトの彼のことだった。
彼には私のような苦しみはないだろう……だからあんなおもしろい日記がかけるのだろうか。
莉子は目を瞑った。
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