カラダ探し
階段に差しかかった私は、「赤い人」の事を思い出した。


あんな小さな子が飛べるんだから、きっと私も飛べるはず!


……なんて、やっぱり無理!


三段飛ばしで階段を下りる。


それでも、髪の毛を後ろに引っ張られるように、顔の皮が突っ張るほどの恐怖を感じる。


後ろからも追ってくる恐怖と、階段を下りる恐怖に挟まれて……。


私は最後の五段を飛び下りた。


「痛っ!」


着地の際に、左足首をひねってしまったみたいだ。


バランスを崩して、転んでしまいそうになったけど、無事な左脚でなんとか踏ん張り、正面の壁に、よろけるようにしてぶつかった。


その際、ぶつけた右肩が痛むけど……死ぬよりマシだ。


さらに言ってしまえば、「昨日」に戻ったら、怪我も治っているのだから。


ズキンズキンと左足が痛むけど、この際足が折れたって構わない。


ホールまでもう少し。


残った力を振り絞り、ホールに安置されている棺桶に向かった。


その背後から、健司が迫る。


カラダを納めるのが速いか、健司に殺されてしまうのが速いか……。
< 282 / 634 >

この作品をシェア

pagetop