カラダ探し
月の光で浮かび上がったその人影が、綱にしがみつくふたりを引き上げていたのだ。




「どうしてどうしてあかくする~」




本当にあれは健司なの?


健司だとしても、泰蔵に取り憑かれているに違いない。



「どうしてどうしてあかくなる~」



そうでなければ、ふたりがぶら下がっている綱を、あんなに簡単に引き上げられるはずがない。


ふたりのあの位置からでは、屋上にいるのが、健司だとは気づいていないだろう。



「お手てをちぎってあかくする~」



でも、どうして泰蔵があんな事を?


屋上の縁に足をかけて、ふたりが上がるのを手伝っているように見える。



「からだをちぎってあかくなる~」



そう思った次の瞬間、私は自分の考えの甘さを思い知らされた。
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