Blood Tear
茶色の髪を風に揺らすのはコウガ。
彼は敵が消えたのを確認すると、作り出した剣を手放した。
「…助かっーー」
男性は立ち上がり、目の前に現れたコウガに一言礼を 言う。
だが途中で言葉を止め、離れるように後ろに後退。
姿勢を低くし威嚇するように牙を出す。
剣を手放したコウガは自分に向かって威嚇する男性に 疑問符を向け、戦う意志は無いと手を挙げる。
「お前も、奴らの仲間か!」
「仲間……?」
「奴らと同じ臭いがする……それに、血の臭いも……」
「血……」
鋭い黄色の瞳で睨み鼻をひくつかせるが、コウガは一向に武器を手にする事はなく、男性の言葉に顔を伏せ立ち 尽くす。
「…もしかして、お前も……」
立ち向かってこない彼に目を細めると、低くしていた 上体を起こし威嚇を解く。
男性の呟きに伏せていた顔を上げると、微かに悲しみ を含んだ黄色い瞳と目があった。
「大切なものを、失ったのか……?」
男性の発した言葉に、ドクリと心臓が跳ねた。
大切なもの…
太陽のように微笑む女性の姿が頭に浮かぶ…
あの記憶が蘇る…
それと共に、血に染まったあの記憶が…
悪戯な風が2人の髪を揺らす中、暫く互いに向かい合 っていると、どこからか地鳴りのような低い音が聞こえてきた。
「あ、悪い……」
腹をさすり頭をかく男性。
その空腹の音に緊張感は解け、2人は笑い合うのだった。