Blood Tear
逃げ惑う人々の間をすり抜け辿り着いた町長の家。
大きな玄関口は吹き飛ばされ、部屋の中は見るも無惨に荒れていた。
飾られていた絵画は形もなく燃え果て、高価な花瓶は地に落ち割れている。
その中を警戒しながら歩いて行くと、ある人物を発見した。
「ジョゼノフさん!」
「…ぅ……」
崩れた瓦礫の下敷きになり血を流す男性。
白髪混じりが黒髪のこの男性の名はジョゼノフ。
この町の町長であり、アリアの父でもある。
傷だらけの彼を抱き起こし無事であるかを確認。
苦しそうではあるが息はある。
「……ァ……!」
「喋らないで下さい!」
何かを口にするがそれを制する。
しかし彼はコウガの腕を力強く掴むと苦痛に顔を歪めながら叫ぶ。
「…リア……!……アリア…!!」
と…
その言葉にハッとした。
そう言えば、彼女の姿がどこにもない…
ここにいないという事は…
コウガは傷を負うジョゼノフを救出に来た人達に預け 外へ出る。
「…アリア……!アリアーー!!」
後ろからはジョゼノフの悲痛な叫びが聞こえてくる。
その声にはどこか憎しみの感情が感じ取れたのは気のせいだろうか…
そんな事は気に止めず、物凄い早さで駆け出すコウガ。
彼女がいるであろう教会を目指して。