風に恋して:番外編
「まー、うーうー、きゃははっ」
「ルカ、そんなに急いだら転んじゃうよ」

おぼつかない足取りで自分の作り出した風を追いかけているルカの後を、リアが追いかける。

くるくると小さく渦巻く風は、意思を持つかのように城の廊下を進み、レオの執務室の前でパチンと消える。

「ぱー!」

ビタッと、ルカが重厚な扉に身体を張り付けて叫ぶ。

我が息子ながらとても賢い子が生まれたと思う。ルカはいつだって、レオとリアの居場所を把握しているようだ。

言葉もまだハッキリとは話せないが何を言っているかは皆がある程度理解できる。

お腹にいた頃から風となってリアやレオ、城の者たちと戯れていたのもそうだが、生まれてから彼の力は確実に強くなった。

いや、もともと強かったものが母親のお腹の中という制限を抜け出したことで表れたのかもしれない。

「ルカ、開けるぞ」
「ルカ、扉が開くよ。離れないと痛いよ?」

レオの声が部屋の中から聴こえてきて、リアはルカの手を優しく引き寄せた。ルカは嬉しそうに笑ってリアの足にくっつく。
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