恋するマジックアワー(仮)

―――――……
――――……


キュ、キュって音が体育館に響く
ダムダムってリズミカルなボールを弾く音

たくさんの観客がいて、黄色い声援が飛び交っている。


肩にかけたタオルで汗をぬぐう。
苦しい……。
肺に酸素を送り込みたくて、必死に深呼吸をする。

3回戦。
あたしたちのクラスはなんとかここまで勝ち残っていた。
この試合に勝てれば優勝。

飛んできたバールを受けて誰かにパスをする。
それだけをなんとかこなし、あたしはベンチに戻っていた。


留美子と牧野、それに三嶋くんはまだコートの中だ。


「三嶋バケモンかよ。 あれでバスケ部じゃないんだろ」

「杉浦と牧野との連携すげぇな」

江藤留美子(えとうるみこ)ぱねぇ」


交代で同じくベンチに座ってる男子たちが話しているのが歓声の中から聞こえてくる。


うんうん。3人ともすごい。
あたしなんてとっくにバテてるし。

杉浦くんって、たしかバスケ部のキャプテンだっけ。


てゆか、三嶋くんって本当に凄かったんだ……。
噂は聞いていた。
どの部にも属さなくて、どの部も彼を欲しがってるって。

こうして三嶋くんのプレーを目の前で見ると納得してしちゃうな。


2階席にもたくさんの生徒。
その中には先生も応援にきていて……。

洸さん、は……いないか。


なんてコートから視線を巡らせていた、その時だった。



「海ちゃん!」

「立花ッ!」



突然名前が呼ばれたと思った、その刹那ーーー。


重たい衝撃を額に受けて、あたしの視界は暗転した。

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