恋するマジックアワー(仮)

呟いた留美子の言葉に、また眉間にシワが寄った。

腕組みをしたままの留美子は、そのままあたしの顔をチラリと見た。


???


「気が付かなかった。海ちゃんが男の人と住んでるなんて」

「……」


ああ。

自分の口から咄嗟に飛び出てしまったあの言葉、すっかり忘れていた。


そうだ……あたし、留美子に好きなヒトは“洸さん”って口走ってたんだ。

ああ、もう……なんであんな事言っちゃったんだろう……。

違うんだよ、留美子。

あたし洸さんの事、好きでもなんでもないの。

あの人はね?
あの人は、留美子も知ってる人で。

ほら、あの冴えない人なんだよ。
留美子も言ってたでしょ?どこかで会った事あるようなって。


「こう、さん……だっけ?一緒に住んでる人が好きだなんて……。もしかしてもう進展ありなの? 実は付き合ってりするとか?」

「えっ」


いきなりの留美子の質問に、飛びかけていた思考が一気に引き戻された。


「なぁに?その動揺っぷり。うそ……まかさほんとにもう。部屋着なのに隠しきれてないあのイケメンオーラ……。手がはやそうな人だったもんねぇ。……あ!でも、ほ、本当に大丈夫なの!? 海ちゃんヒドイ目にあってない!?」

「え?ちょ、留美子、お、落ち着いて……」


妙に納得したあとに、顔を真っ青にしてあたしに詰め寄ってくる留美子。

怖い!顔怖い!しかも全然違う!!


洸さんは、一緒に住んでる事は秘密にしようと言ってた。
でも、留美子は親友だもん。

留美子にだけ言っても……いいよね?


別にいっさい好きとかなんでもなくて……あの人はただの同居人で、愛さんの弟で、距離感おかしいだけで、あのもっさい美術部の顧問なんだって。


……ゴクリ。


「あ、あのね?実はあの人……」



意を決して顔を上げた瞬間、まるでタイミングを計ったみたいに、屋上の扉が開いた。

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