恋するマジックアワー
「おはよ」
「え、あ……おは……っ」
普通に挨拶されたもんだから、わたしも普通に返しそうになって慌てて口を継ぐんだ。
さ、爽やかすぎる……。
なんなの? 眩しいんですけど……。
真っ黒な髪に、真っ白なシャツが朝日に反射して、目眩がした。
絶対口きいてあげない。
わたし、まだ昨日の事怒ってるんだからね。
洸さんがちゃんと謝って、誠意見せるまで、絶対、絶対無視するから。
心の中でそう誓って、グッと唇を引き締めると洸さんからツンと顔を背けた。
「海ちゃん朝ごはんは?」
「……」
その質問には答えずに、そのまま洗面所に入って顔を洗う。
日焼け止めと、リっプを乗せて、さっさと玄関へ向かった。
玄関を出る時、背中に洸さんの声が聞こえた気がしたけど、それもギュッと目を閉じて耳を塞いだ。
絶対絶対、許してあげないんだから。
***
「げ」
「え? あ、ちょ……海ちゃん?」
体育の授業。
グランドへ向かう途中、わたしはあるものを見つけて慌てて留美子の腕を掴んで階段の下へ潜った。
「どうしたの?」
「しー。もう少し!」
え?と首を傾げた留美子は、わたしの肩越しに向こう側の様子をうかがってる。