だから、恋なんて。

長年使い古した小さい冷蔵庫の中から朝食代わりの豆乳飲料を取り出す。

少しでも女性らしさを失わないように、ちまちまとイソフラボンの摂取にいそしむ。

そんなことでどうにかなるものでもないとは思うけれど、だからどうでもいいとは割り切れない。

もう結婚なんて大きく望んではないけれど、でも「…だから結婚できなかったんだね」とは言われたくない。

「一人が気楽」と心底思っているけれど、強がっているなんて絶対思われたくない。

そんな思いを抱えながら顔を洗って鏡の前に座って、慣れた手順で化粧をする。

厚ければ「無理しすぎ」と言われ、薄ければ「諦めちゃったんだ」と思われるから、適度に、普通に、身だしなみ程度で。

病院につけば白衣に着替えるとはいっても手を抜くわけにはいかないから、夏でもTシャツにただのジーパンで出勤するわけにもいかず、グレーのシャツワンピースに袖を通して家をでる。


さて、四十路を迎えてから初出勤、頑張りますか。


< 15 / 365 >

この作品をシェア

pagetop