春の桜は色鮮やかに=独眼竜の妻・愛姫=
ふう、と息を整えて愛姫は襖に手をかけた。


静かに手を横に引き、短くあいさつを述べる。




「愛でございま「おっ、来たな。入っていいぞ」

「・・・・・」

「なんだよ。ほら、もっと寄れって」




何だかんだいって、政宗に流されていると感じる愛姫。

不思議と、悪い気はしなかった。



改めて見てみると、政宗は年の割に細身の体をしていた。

一人っ子の愛姫にはあまり男子の体を見る機会はないが、それでもほぼ同年代である家臣の息子に会ったときは、もう少しがっしりとした体つきだった。


だがそれでも、政宗には男としての魅力が十分にある。



色白の肌に映える真っ黒な髪。
遊女もうらやむであろう、恵まれた顔立ち。
そして、声変わりの途中にある少し低い声。


政宗は、色男としてはどこにも文句のない条件をそろえていた。



けれど、愛姫も政宗もしょせんは政略結婚の夫婦に過ぎない。


お互い家を背負う身として、相手方の内情を探ることは第一の役目。

今、色恋事にうつつを抜かしている場合ではないことは分かっていた。





結婚とは、駆け引きなのだ。
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