春の桜は色鮮やかに=独眼竜の妻・愛姫=
特に怒った様子もなく、ただ姫君についての話を聞きたがる政宗。


縁談に否定的ではないと見て、ひとまず景綱はほっと安心した。

これならば姫の話をしても大殿に咎められることもないだろうと判断した景綱は、ふうと一息ついて口を開いた。




「そのご様子、此度の話は聞き及んでおられることかと」

「ああ。城の女中の噂は、すぐに流れてくるんだ」

「女中どもには後で某が釘を刺しておきましょう。して、姫君ですが」

「知っていることは全て聞かせろ」

「はい。姫君の名は、愛姫様といわれます。年は、十二歳と」

「俺より一つ下か・・・。しかし、珍しい名前じゃないか」

「はい。きっと、その名に恥じぬ愛くるしいお方なのでしょう」




景綱の話を聞いて、うんうんと相槌を打つ政宗。



頬を染めて耳を傾ける様子は、初恋の少年そのものだった。
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