山神様にお願い


 バイト達の絶賛にそうだろうそうだろうと、ビールを飲みながら龍さんは満足げに笑っている。

「俺は天才だ。何させてもうまい」

 そう言ってふんぞり返っている。その時、実に人の良さげな笑顔を浮かべた店長が隣から手を伸ばし、いきなり龍さんの体をポンと押した。勿論、ふんぞり返っていた龍さんは見事にそのまま砂の上にひっくり返る。

「ぎゃあ!」

 全員で爆笑した。

「こら虎!お前年長者に何するんだ!」

 椅子ごと倒れたままで、龍さんが盛大にブーイングをかましている。店長は相変わらずニコニコと笑顔を浮かべて、優雅に手を差し伸べた。

「すみません、おじ様。腰など痛めてませんか?お手をどうぞ」

「・・・お前、砂に埋めるぞコラ」

「酔っ払いには負けないよ、龍さん」

 お前も茶髪になれ!そう言って、立ち上がった龍さんが店長の頭にビールを振り掛ける。二人でぎゃあぎゃあと騒ぐのを後の3人は無視して、食事に集中していた。

 子供だ、本当。

 ようやくふざけるのを止めた店長と龍さんが簡易の椅子に偉そうに座って、私たちに指図をしながら食べ始めた。

 他の3人が構ってくれないことに気付いたらしい。


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