山神様にお願い


 私からは龍さんの顔は見えなかった。だけど、その大きな背中が少しばかり緊張しているのが判った。

 店長は無表情で座敷にあぐらをかき直して座り、頷いた。

「そう」

 ふーん、と龍さんが呟く。

「シカに触ると、どうなる?」

 ポンとたたきにスニーカーを落として、龍さんが両手を腰につけ、座って寛ぐ店長を見下ろした。

 ぴたっとツルさんとウマ君が踊るのを止めた。私は冷や汗を垂らしたままで動けなかった。

 一瞬で店の中が緊張に満ちる。

 え、え?どうしたの、二人は怒ってるの?ええと・・・どうしたらいいんですか!?てか、何が起こってるんですかああああ~?

 私は挙動不審に店長と龍さんを交互に見詰める。

 その時、無表情でじーっと龍さんを見上げていた店長が、急に笑った。

 大きな口をひゅっと上げて、いつものあけすけな笑い方をする。瞬時に店の中の緊張した空気がとけた。

 店長はあははは~と声を出して笑って、線のように細めた瞳でいつもの優しい笑顔を見せ、そのかなりの善人面をしたままで、さらっと言った。

「試してみますか、龍さん?」





 ・・・・ひょえええええええ~っ!!




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