山神様にお願い


 母親が私をちょっと疑ったようで、卒論は家で書くことにして、もう一人暮らしはやめて帰ってきなさいって言ったのだ。

 私は森で汗をかきながら食い下がった。

 私は山神のことを説明し、今は店長がおらず人手が足りてないから、このまま辞めれないと食い下がって何とか説得したのだった。

 無理よ、そんな急にバイト先を辞めて立派な正社員で働けるわけないでしょ?って。アルバイトだからってそんなことしていいってことにはならないわって。

 もう必死だった。

 それもこれも、全部全部ぜーんぶ、あの高校生のせいなのだ~っ!!

 うおおおおー!!と私が怒りに震えて叫ぶのを、皆は持て余した顔で眺めている。

「・・・まあ、あれだよ、シカちゃん。悪賢い高校生に、仕返しなんて企んじゃダメよ」

「え!?どうしてですか!?これは絶対に抗議しないと!」

 くわっと目をむいてツルさんに向き直ると、新しいビールを注ぎながら龍さんが言った。

「お前では勝てないから、今こうなってるんだろ。もういいから虎が戻るまで大人しくしとけよ。抗議しに行って今度こそ相手に襲われでもしてみろ、本当に虎に喰いちぎられるぞ」

 そして龍さん、ツルさん、ウマ君の3人で両手をバタバタと振った。

 おすすめしなあ~い、って。

 ・・・・・くっそう。

 言い返せない自分が悔しかった。



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