山神様にお願い


 私が色々自問自答していることは店長はわかっているらしかった。椅子の上であぐらをかいて、黙って待っている。

 ・・・多分、緊張しているんだろうと思う。何となくいつもの柔らかさが彼から消えている。

 ひばり、どう?

 あなたが知りたかった、色んなことを話してくれた。それは思った以上に大きな話で、私が今まで知らなかった世界、別にこれからも必要ではない世界の話だ。


 だけど。

 だけど・・・・。

 ――――――――――だからって、好きなのは変わらない。

 ゆっくりと目を開けて瞬きをする。

 だからって、この人を嫌いになったりはしない。

 それが物凄く、自分の中でハッキリした。


「店長」

「うーん?」

 私は顔をあげてにっこりと、出来る限りの大きな笑顔でこう言った。

「私の半生、知りたいですか?」

 微笑を浮かべたままで、彼が私を見る。その釣り目とバッチリ視線が出会ってしまって、私は一瞬目を逸らしそうになった。だけど耐えた。今は、頑張るときなんだって判っていた。

「・・・どっちでもいいかな」


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