山神様にお願い


 そして閉店時間。

「ありがとうございました~!またお願いしまーす!」

 龍さんがそう言いながら団扇で扇いでいる。相変わらずの凄い汗だった。

「じゃあ、シカちゃん、体には気をつけてね」

「はい、ありがとうございます!」

 最後の常連のお客さんが会計を済ませて、千鳥足で出て行った。

 暖簾を外して店の中に仕舞い、皆で掃除をする。この時も皆は色んなところで好き勝手に喋りまくり、たまに爆笑したりしている。

 そしてビール一杯で乾杯。龍さんが作ってくれた愛情ツマミで幸せにそれを飲み、今日の働きにそれぞれが頭を下げる。

 そして恒例の儀式だ。

「さて、じゃあ祈って帰ろうか」

 夕波店長がそう言って、皆がはーいと返事をした。

 今日もこの店では皆が同じように両手を合わせる。ウサさんも、私も一緒に並んで合掌した。


 姿勢を正して、瞼を閉じて、頭を垂れて、店の一番奥の壁、色とりどりの飾りに向かって―――――――――――――



「山神様、お願いします!」










「山神様にお願い」完 
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