山神様にお願い


「龍さんだろ?お前は覚えも悪いな」

「もう~!」

「怒るなよ、ほら、シカもお願いごとしてみたら?」

 プンスカ怒る私に龍さんが言った。私の隣から、ツルさんも口を出す。

「そうそう。来るたびに皆お願いごとしていくんだよ、山神様に。それが恒例。私も今日のお願いしよーっと」

 そう言うと、彼女は椅子から滑り降りて奥の壁まで歩いていく。

 黙ってみていると、拍手を打って、合掌して頭を下げている。正月に神社でする、あれだ。あれを、奥の壁に飾られた飾りのようなものに向かってしていた。

「俺も」

 龍さんもそう言って、ツルさんの隣に並んで同じことをする。

 ――――――――――マジで?

 私がぽかんとそれを見ていると、夕波店長が微笑した。

「お願いごとがあるなら、シカちゃんもどうぞ」

「・・・叶うんですか?」

 それだったら是非かなえて欲しい願いがある。そう思いながら聞くと、さあ?と店長は手の平を天井へ向けた。

「知らない」

「・・・知らないって」


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