山神様にお願い


「喧嘩じゃねーだろ、割と高い可能性の事実だ事実」

 かなりニヤニヤしていると、虎の目が細くなった。その細い目の中から理性の色が消えたような感じがして、俺は一瞬体を硬くする。やべ・・・・ここら辺でやめておこう。

「まあいーじゃん。お前だって帰るんだろ?俺は4日までぶらぶらしとくよ」

 そう言いながらジョッキを空けると、また笑顔に戻った虎が振り向いて言った。妙に軽快な言い方で。

「じゃ、暇な龍さんに宿題だよ。新年の新メニュー考えといてね~」

「は?」

「そろそろ何か変えたいでしょ。宜しく」

「いやいや、俺はいいぞ、今のメニューで」

「だって暇なんでしょ?」

「・・・暇じゃねーよ」

「いや、暇だよ!だって実家も帰らないんだし」

「バカいうなよ。なんで他が遊んでるときに俺だけ働くんだ、ああ?」

「新しい一品を皆で楽しみにしてるよ、龍さん」

 に~っこり。それは特大の企んだ笑顔だった。

「──────」

 ・・・やっぱりさっき弄られたのを根に持ってるんだな、と思った。虎はカウンターに寄りかかってだら~っとした体勢だけど、殺気がみなぎっているのに気がついてしまった。

 ・・・・くそ。


 そんなわけで、俺は新年早々新しいメニューを考える羽目になってしまったのだ。



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