花のように


 がむしゃらに走った私は、気がつけば、見知らぬ公園に来ていた。


「はあっ、はあ……っ」


 夢中で走って逃げてきたせいで、無意識のうちに握りしめていたらしい。

 あんなに私の心を弾ませた黄色いチューリップは、ぐしゃぐしゃになっていた。


「泣く……もん、か」


 涙を堪えて顔を上げると、一面の黄色が私の顔を照らし出す。

 目の前の花壇は、黄色いチューリップで溢れていた。


『佳奈、愛してる』


 そう言って、彼が手渡してくれた大好きだった黄色い花。


 ……彼の庭には、一輪も咲いてはいなかった。



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