花のように


 押し寄せる後悔に視界が歪む。私は顔を伏せた。


 ちゃんと愛してあげられなかったな、私。
彼にそうできなかった分、いつの日か私も、慈しめる相手に出逢えるだろうか……


 顔をあげると、もう彼はいなかった。
ガーベラのブーケは売れていた。


 まだ、彼も傷ついているのかもしれない。
私を傷つけたことに。


 彼を失って、こんなに時間が経って、ようやく私は幼かった自分に気がついた。


『それでも、また、誰かを愛したい』


 前を向いて、私は週末の雑踏の中に歩き出した。


fin



< 34 / 59 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop