俺ら参上ッッ!!


-次の日-


ピピピ


「んー…」


いつも通り朝8時の目覚まし時計が鳴る。
ゆっくり身体を起こすと、熱っぽいうえに頭が痛い。


「完璧風邪引いた…」


また布団に入る。
ふとひかりのことを思い出した。


「ひかり風邪引いてねーかな…
風邪引いてたらオレのせいだよな…」


ここ1ヶ月、オレはネガティブになってきた。


「恋一〜??」


起きてすぐにリビングに行かなかったから、姉さんがオレの部屋に入ってきた。


「どうしたの?」

「あー…なんか風邪引いたっぽい。
今日休んでい?」

「うん、それはいいけど…
薬後で買ってくるね」

「ん…サンキュ」


そう言って姉さんは部屋を出て行った。

あー、頭いてぇ…

再びベットに入って身体を丸める。
実は今日はずっと寝てない。
ひかりの気持ちを考えていたら勝手に夜が明けていた。


ピーンポーン


ひかりのことを考えていたら、チャイムが鳴る。
きっと莉子だ。
パタパタと姉さんの足音が聞こえた時に、オレは姉さんを大声で呼んだ。


「姉さん!」

「ど、どうしたのよ!
莉子だと思うよ!」


ドア越しに会話をする。
大声を出した反動で頭がさらに痛くなった。


「出ないでくれ、姉さん」

「どうしてよ…??」

「…会いたくねーんだ、莉子に」

「……わかった」


そう言って姉さんはリビングに戻る。

今は莉子の顔見たくねーんだ…
悪い、莉子。

ずっと鳴っていたチャイムが鳴り終わった時、また姉さんがオレの部屋に入ってきた。


「どうしたのよ恋一…
莉子ともなんかあったの?」

「いや…特に」


ほんとに何もない。
ただオレの気分だった。


「…また前みたいになんかされてるの?」

「……いや」


されてるのかアレは…
よくわかんねーわ…


「あんたさ、自分の気持ちに素直になったらどうなのよ?」

「え…??」


少し怒った顔で姉さんが言う。


「誰かを好きになるってことはね?恋一
時々何かを犠牲にしなきゃならない時だってあるの。
我慢して好きじゃない人と付き合ったって、自分が損するだけじゃない」

「……」


黙って聞くしかできなかった。
ほんと、姉さんの言う通りだ。


「恋一は気づいてないみたいだから言うけど…
あの子は身を引いたんだよ?莉子のこと考えて。
恋一のことが好きでたまらないのに…ほんといい子だよ」

「え…」


そう…なのか?


「でもひかり、オレのことキライって…」

「そう言ったの?
それは莉子との関係崩さないためよ。
キライって言えば離れていくから。
嘘に決まってるじゃない」


マジかよ…

全然気づかなかった。
ひかりがそんなこと思ってたなんて。


「なんで姉さんがひかりの気持ちわかるんだ…??」

「あの子の目を見たらすーぐわかったわよ!
あとは女の勘??」


ニコニコ笑う姉さん。

根拠に欠けるけど…
少しひかりをわかった気がする。
あと…オレの気持ちも。

オレは決意を決めた。


「そうそう!
恋一はそうやって笑ってればいーのよ!」

「え?」


側にあった鏡で顔を見ると、表情が柔らかくなったオレがいた。


「やっぱりあの子といる時と、あの子のこと考えてる恋一が一番キラキラしてるよ」


そうなのかもしれない。
それにしてもオレ、こんな優しい顔できてたっけか…?


「1ヶ月ぶりだよ!
まったく、もっと早くにアドバイスしてあげれば良かった!」

「サンキュ、姉さん!」


オレの久しぶりの笑顔。
嘘偽りもなにもない。


「オレ学校やっぱ行くわ!」

「え!?
身体大丈夫なの!?」

「ひかりに会いたくなった!
身体とか関係ねー!!」


オレは急いで準備をする。


「行ってくるわ!」


靴を履いて勢いよく玄関を出る。


「まったく…頑張れ恋一」


待ってろよひかり!
1ヶ月…傷つけてゴメンな。









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