あの日もアサガオが咲いていた。
やたらと機嫌のいいその二人を見ながら、龍野はふぅと短く息を吐く。
「…もう二十年も経つのか…」
周りの視線が机の中央に向いているなか、ポツリと唇が紡いだ言葉。
そう呟いた龍野の声を拾うことが出来たのは、隣に座っていた佐藤だけだっただろう。
しかし、その言葉を聞き返すことは出来なかった。
なぜなら言葉を紡いだ龍野もまた、あの二人に負けず劣らず穏やかな顔をしていたからだ。
そこにはトレードマークといっても過言ではない眉間のしわは見当たらない。
普段から鬼のように眉間にしわを寄せているか面倒臭そうにだらけているイメージの強い彼がそんな表情をしていることに佐藤は驚いた。