あの日もアサガオが咲いていた。
「…上手くいくといいですね」
それは過去にあった景色を思わせる言葉。
今はもう、あの季節を知る人は少ない。
三人が確かに目撃した、あの朝顔のように儚くも美しいそして愛に満ちた時間。
どれほど時が経っても、幾つ季節が巡っても。
決して色褪せることのない目蓋の裏の絆-キセキ-。
「大丈夫じゃよ。今年はあの子たちのような子がいる」
老人はそう言って窓の外を眺めた。
先程まで降っていた雨はいつの間にか止んでいて。
キラキラと降り注ぐ木漏れ日。
雲の切れ間に見えた青が、あの季節を運んでくる。
「きっと綺麗なアサガオを咲かせてくれるじゃろう」
朝顔がその笑みを咲かせる季節が。
和泉原学園伝統───中高合同文化祭の季節がやって来る。