あの日もアサガオが咲いていた。
「…?」
パラパラと人の声が行き交う昇降口。
そんな人も疎らな下駄箱の前で忍成絢也(オシナリ ジュンヤ)は一人困っていた。
原因は彼の手の中にある一枚の白い封筒。
純白を思わせるそれは汚れを知らない真綿のようにも見えた。
朝登校したときには何もなかったはずの下駄箱に、帰りになると何故か入っていたそれ。
嫌がらせや悪戯の類いにしては綺麗すぎる。
そしてそんなことを絢也にする相手はこの学校にいない。
(何かの伝達…?)
誰かからの用事を伝える手紙だろうか。
一瞬そんな考えが絢也の頭を過る。
しかし封に推してある厳重そうな赤い印と高級感漂う肌触りのいい封筒を見る限り、同級生からのものという可能性は極めて低い。