[完]バスケ王子に恋をして。
ープルルル

「はい」
<春樹……>

電話の相手は竜基さんだった。

いつもより声のトーンが低いのが気になる。

「どうかしたんですか?」
<……今すぐ病院に来れるか?>
「え……?行けますけど……何で?」

今日は奈未の退院の日じゃ……

<……話はこっちに来てからする……>

そういって電話が切れた。

何だか嫌な胸騒ぎがしていたが急いで病院に向かった。


病院の中に入るとロビーに座っている奈未の両親と竜基さんがいた。

「春樹……これ……」

竜基さんが渡してきたのはピンクの封筒。

綺麗な字で

“春樹へ”

と書いてある。

奈未の両親を見てみると深刻そうに下を向いていた。

「これって……」
「手紙だ……奈未からの……」

そう言われてゆっくりと封筒を受け取って紙を出す。


ー春樹へ

こんな手紙でごめんなさい。

今日退院だって言ったでしょ?
あれ嘘なの……。
本当は今日。春樹に最後に会った日に退院したの。
嘘ついてごめんね……?

何で嘘ついたのって思うでしょ?
私……春樹の前から消えるね……?
行き先は教えれないけど……ずっと考えていたの。
春樹とよりを戻した時からずっと。

私……春樹にたくさん迷惑かけた……。
もちろんパパやママにもお兄ちゃんにも。

だからしばらく一人で生きていけるように旅に出るね?
そうして償いたいの。
春樹の頭の中から私をしばらく離してバスケに集中して欲しいんだ。
春樹には夢をもっと広げて欲しいの。

これが最後じゃない。ちゃんと戻ってくるよ?
でも……しばらく私を忘れて?
私がちゃんと春樹に相応しい人になったら帰ってくるから。

遠くにいても春樹を思ってるよ?
もし私に会いたくなったら空を見て?
空は繋がっているから……私に通じるから……。私はいつでも春樹の味方だからね?

強くなって帰ってくるから……
春樹……大好きだからね……?
これだけは忘れないで?

さようなら……

奈未ー



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