ama-oto
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 本当はまっすぐ駅に向かうつもりだった。

 私、豊崎菜月は早足で図書館に向かっていた。

 講義中に図書館からの資料到着のメール着信があった。今日図書館に寄らなければ、資料の受け取りは週明けになってしまう。できるだけ早く、目を通しておきたい。図書館に寄っても、彼との約束の時間には間に合う。

 時間ばかりに気をとられていた。空の様子なんて、ろくすっぽ気にしていなかった。図書館を出ようとしたその時、連日の暑さを冷ますように、嵐のような雨が降りだした。不意打ちで夕立がやってきた。

 どうしよう。

 携帯の画面をタップしながら、彼へ連絡するかを思案した。

 ずぶ濡れ覚悟で走るか、遅れると電話するか…

 いや、連絡しても、アイツは今、あの子のとこにいるか…

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